東京都中央区を流れる亀島川の最下流にかかる、南高橋(みなみたかばし)です。橋のすぐ下流(東側)には亀島川水門があり、その先は隅田川です。橋からは見える佃エリアの高層マンション群を仰ぎ見る景色は少しシュールで、ある種”東京らしい”眺めでもあります。
南高橋ってどんな橋?
橋の北側、かつて霊厳島(れいがんじま)と呼ばれていた新川地区と、南の鉄砲洲の間にかかる鋼鉄製のトラス橋です。
1923年にあった関東大震災の復興事業の一つとして架橋されましたが、橋の主要部分は旧両国橋の損傷が少なかった部分の材料を利用して作られています。その旧両国橋がかけられたのは1904年ですから、縁起から数えると、100年以上の歴史を誇る橋ということになります。
実際に、都内に現存する鉄橋のうち、車が走ることのできる道路橋としては最も古い橋です。
人道橋としての最古橋は、現在江東区にある八幡橋(はちまんばし)で、国の重要文化財に指定されています。
八幡橋も元は中央区にあった橋(旧弾正橋)で、そこから現在の場所に移築されたということです。
ちなみに上に書いた霊厳島の由来となった霊厳寺(れいがんじ)は、江戸自体の明暦の大火で焼失し、その後深川後に移りました。現在も、清澄白河駅のすぐ近く、江戸深川資料館のすぐ隣に霊厳寺は健在(?)です。
橋の構造について
橋の脇にある掲示によると、南高橋の形式は「下路式単純プラットトラス橋」で、橋長は63.1m、有効幅員は11.0mあります。総工費は76,600円とありますが、これは今の貨幣価値だとどの程度になるのでしょうか。
構造上の特徴としては、トラスの一部材の端に丸い環のついた“アイバー”が用いられていて、全体はピントラス橋とも呼ばれているとのこと。このあたりが、明治期の技術を今に伝える貴重なものの証となっており、中央区の文化財にも指定されているのです。
さらには2016年(平成28年)には、土木学会選奨の土木遺産としても認定されました。
南高橋のある風景
東京駅方面から深川へ向かう鍛冶橋通りを走っていると、八丁堀を超えたあたりで目に飛び込んでくる鮮烈な風景、それがロマンチックなレトロなトラス橋とその背景にみえる佃の高層マンション群です。
この風景を眺めるだけでも、この付近まで足を伸ばす価値はあると私は思います。
南高橋からの風景
橋のすぐ南側にあるのは、亀島川水門。
このすぐ先は隅田川です。この水門が大きな役割を果たしていることは立地からもわかるのですが、これがなければダイナミックなアーバンリバービューが楽しめただろうと想像するとちょっと残念。
逆側はこんな感じ。
豊海川をさかのぼていくと、奥に見える高橋(たかばし)の先でククッと東側に折れ曲がり、茅場町あたりで日本橋川に合流します。
この高橋、清澄白河にある高橋と同じ名前ですね。珍しくはない名前ですが、同じ名前の橋を見つけるとちょっと興奮してしまいます。笑
おしまい
景色 ★★★★
容姿 ★★★★
価値 ★★★★
地味な立地と、橋好きでなければ見逃してしまうようなたたずまいながら、歴史と風格と、メトロポリタンな借景を備えた名橋です。願わくば、都市開発などに巻き込まれないで、このまま永遠に現役を続けてほしいと願います。
行き方(アクセス):JR・東京メトロ「八丁堀駅」B4出口から徒歩3分
おまけ
橋のたもとには、小さな稲荷神社が。
これも橋のたもと。解読できず。。。
立派な橋銘の下には、土木遺産の認定プレートが。
中から小さな兵隊でも出てきそう。