年に公開された「はじまりのうた」、原題は「BEGIN AGAIN」です。結論を先に言うと、とてもとてもとてもすばらしい映画でした。
ストーリーはよくできた中編小説かの如く小気味よく展開し、大事な場面には印象的な音楽と美しい歌声がある。いかにメークダウンしたところで隠し切れないキーラ・ナイトレイの美貌だけがキャラクター的に少々不自然ながら、自他ともに認める貧乳でこれをカバー(?)。
オススメ!
はじまりのうた BEGIN AGAIN(字幕版)【Amazonプライムビデオ】
豪華登場人物全員、NO MUSIC,NO LIFE
ストーリーはすべて音楽で転がっていきます。
主人公の2人、ダン(マーク・ラファロ)はかつての売れっ子音楽プロデューサー、グレタ(キーラ・ナイトレイ)はアマチュアながらも才能溢れるシンガーソングライターです。ライブハウスで偶然出会った2人は、グレタのデモアルバム制作のためのレコーディングを通して、絆を深めていきます。
ストーリーのキーとなる助演も、音楽無しでは生きられない2人。グレタの恋人デイブ(アダム・レヴィーン!/マルーン5)は、人気急上昇中のミュージシャン。ダンの娘バイオレット(ヘイリー・スタインフェルド)は、思春期真っただ中ながら楽器でなら自分を素直に表現できます。
私自身はNO MUSIC,NO LIFEとまではいかないのですが、この映画を観ると素直に「音楽っていいなー」と思えます。
もう少し、あらすじ ※ネタバレ無し
Amazonプライムビデオの作品紹介から、あらすじを引用します。
ニューヨークの街角を録音スタジオに!?ミュージシャンの彼デイブに裏切られ、ライブハウスで歌う失意の主人公グレタ。偶然居合わせた落ちこぼれの音楽プロデューサーのダンとの出会いがデビューの話しへと発展するが、録音スタジオは、なんとニューヨークの街角!?!? 路地裏、ビルの屋上、地下鉄のホームとゲリラレコーディングは実施され、この無謀な企画が小さな奇跡を起こし始める。そしてアルバムが完成したその日、誰もが予想できなかった最高の「はじまり」が待っていた。
~以上、Amazonから引用~
む?
途中まではその通りなのですが、『誰も予想ができなかった最高の「はじまり」が待っていた』ではないような…
それぞれに人生の暗闇に迷い込んでしまっているグレタとダンが、偶然巡り合ったアルバム制作という機会を通して光(それはかつても見えていた光)を見つけ、自分自身を取り戻し人生をリ・スタート(BEGIN AGAIN)する。
そのリ・スタートは、決して“最高”とは言えないものです。ある種の選択には付きものの、痛み(例えば別れ)を伴う苦しさも、そこにはあります。
未来のことは誰にもわかりません。だけども、過去を振り切って(取り戻して、と言うべきか)、決然と前へと進み始めたグレタとダンの未来が明るいことを全力で祈りたくなる。
そんなお話しです。たぶん。
余談ですが、この映画を通して映し出されるニューヨークの街並みも、とても魅力的。
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キーラ・ナイトレイ、美しすぎるイギリス人シンガーソングライター
公開後、監督のジョン・カーニーとの場外乱闘があったようですが、超良かった。
歌声はサプライズと言えるほどステキでしたし、なによりスタイリングが最高!
小匙1杯分ダサいパンツスタイルや、NYらしくないガーリーなワンピース。特に、どの格好でも常に肩から掛けてたボロボロのバッグに、リアリティーとキャラ作りへのこだわりを感じました。
「世界で一番美しい顔」に選ばれるくらいなので、そこんところの設定離れ感はありますが、絶妙なスタイリングとそれを着こなす凹凸少な目の体型で、役としてはしっかりはまってました。笑
キーラ・ナイトレイの過去出演作、どれも懐かしい…
- スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス(1999)
- パイレーツ・オブ・カリビアン(2003~)
- わたしを離さないで(2010)
ヘイリー・スタインフェルド、完璧なアメリカのティーンエイジャー
この映画で一番良かったのが、バイオレットことヘイリー・スタインフェルド!!!
両親のトラブルに対する当てつけや思春期ならではのイラ立ち、でもまだまだ両親の愛情や会話に飢えている、そんなナイーブなティーエイジャーとして完璧でした。少しぽっちゃりした体型とか、派手な服が似合ってないとか、時折見せるはにかんだ笑顔とか。
ビルの屋上でのセッションシーンは、いくつかある映画のクライマックスのひとつ。1番好きな場面です。
「Tell me if you wanna go home」アレンジによって、全然聞こえ方が違う名曲ですね。
ちなみにコーエン兄弟の代表作、トゥルー・グリッドで映画女優として華々しくデビュー(いきなり主演!)したヘイリー・スタインフェルドですが、モデルやミュージシャンなど様々な分野で大活躍中です。作中では思春期真っただ中の内向的なティーンエイジャーでしたが、リアルでは若者たちのアイコンとなっている模様。完全に垢ぬけてました。
ヘイリー・スタインフェルドの過去出演作、これしか観たことない。
- トゥルー・グリッド(2010)
マーク・ラファロ、職人肌の俳優が演じる職人肌の音楽プロデューサー
前半のポンコツ感、中頃の天才感、後半見せる包容力、ベテランの苦労人俳優らしい流石の存在感でした。
特に、油断のある顔や体型をアクセントにした冒頭あたりの気持ちの良いクズっぷりは(笑)、この映画を成立させるための重要な要素になっています。
途中グレタとくっついちゃうのかとドキドキしましたが、落ち着く先は愛する娘と妻の元。観た後に、とても暖かい気持ちが胸に残る本作ですが、この落とし方あってこそですよね。
誰にでもオススメできる、絶対的な良作を支える大黒ラファロです。
マーク・ラファロの過去出演作、演技の幅が広い良い俳優ですね。
- エターナル・サンシャイン(2004) ☆☆☆☆
- アベンジャーズ(2012~)
- フォックスキャッチャー(2014)
おしまい
ステキな映画。この言葉に尽きると思います。オリジナル楽曲に彩られた誰も傷つけないストーリー。でもそこには、誰しも人生でぶつかるような葛藤や挫折があります。完璧な正解は誰にもわかりませんが、それを乗り越えた時の清々しさも、一度は経験があるのではないでしょうか。そんな少しばかりの不安を抱えた清々しさを思い出させてくれる、胸熱爽やか映画です。
物語の終盤、ダンがグレタに語りかけます。
「平凡な風景が意味のあるものに変わる。陳腐で詰まらない景色が、美しく光り輝く 真珠になる。音楽でね。」
ジョン・カーニーは、この言葉に説得力を持たせるために、この映画を作ったのかもしれない…
ふんわりと気持ちの良い余韻に浸りながら、そう思ました。
オススメ!
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